日付:2024-01-31
公開日付:2024-01-31
一、馳名商標の認定原則
(一)受動的保護原則
中国国家知識産権局商標局(以下商標局という)又は裁判所は、具体的な事件において、当事者の請求に応じて、その商標が馳名商標であるかを認定し、かつ事実認定をした上で、審決又は判決を出すことができます。当事者が馳名商標としての保護を主張していない場合、商標局又は裁判所は、自発的に認定しません。
(二)事件ごとの個別認定原則
まず、当事者は、具体的な事件において、係争商標が、既に関連公衆に熟知されている商標の複製、模倣、翻訳に該当し、かつ公衆に混同又は誤認を生じさせ、当事者の利益を侵害するおそれがあると考える場合においてのみ、馳名商標の認定を請求することができます。また、商標局又は裁判所は、当事者が提出した証拠に基づいて馳名商標の認定を行い、証拠や事件の状況によっては結論が異なる可能性があります。そして、馳名商標の認定の結果は当該事件についてのみ有効なものとなります。つまり、個別の事件において馳名商標として保護されることは、後続のすべての事件において馳名商標として保護されることができることを意味するものではありません。
ただし、商標が馳名商標として保護されたことは、その商標が馳名商標であるかどうかを考慮する際の重要な要素の一つで、当事者は、その商標が他の事件で馳名商標として保護されたことを証拠として提出することができます。
(三)必要性に応じた認定原則
商標局又は裁判所は、事件の具体的な状況に基づいて、当事者の商標が馳名商標であるかどうかを認定する必要があると判断した場合にのみ、馳名商標の認定を行います。当事者が提出した証拠が既にその商標が馳名商標であることを十分に証明できる場合でも、必要がなければ商標局又は裁判所は馳名商標の認定を行いません。例えば、商標局又は裁判所が係争商標が商標法第30条または第31条に定められた類似商標における類似商標に該当すると判断し、または商標法の他の条項に違反すると判断した場合、引用商標が馳名商標であるかどうかを認定する必要はありません。
(四)信義誠実原則
当事者は、馳名商標の保護を請求する場合において、信義誠実の原則に基づき、記載した事実及び提出した証拠資料の真実性、正確性及び完全性に係る責任を負わなければなりません。当事者が国家企業信用情報開示システムと「信用中国」ウェブサイトにおいて経営異常リスト、重大違法信用喪失リスト、信用喪失連合処罰対象リストに掲載された場合、又は直近の3 年間において資金の凍結、税金の滞納、経済犯罪などの情状があった場合には、当事者の商標が馳名商標であるかについての認定をしません。
二、馳名商標と認定された場合の効果
現行の法律および商標局と裁判所のプラクティスに基づいて、馳名商標は一般商標より強力且つ広範囲に保護されています。主な点は以下の通りです。
(一)一般商標については、通常、商品の保護範囲は同一又は類似商品に限定されますが、馳名商標は区分を越えて保護され、保護範囲を異なる区分の商品に拡大されることができます(全区分で保護されるではありません)。
(二)馳名商標の複製、模倣又は翻訳に該当するかどうかを判断する際の基準は、一般商標の商標類似の判断基準とも異なります。「複製、模倣又は翻訳」に該当するかどうかは、関連公衆に商品の出所について混同や誤認を生じさせやすいだけでなく、関連公衆に馳名商標の標識を連想させやすく、それにより馳名商標の顕著性を希釈させる場合も含まれます。
(三)馳名商標に対する保護期間が延長されます。つまり、悪意のある登録商標に対して無効審判請求を行う場合、馳名商標所有者は5年間の期間制限を受けません。
(四)馳名商標所有者は侵害を受けた場合、より高額の損害賠償を受ける可能性があります。
三、馳名商標として保護されていない原因
必要性に応じた認定の原則の適用に加えて、商標局又は裁判所が当事者の請求に基づいてその商標を馳名商標として保護を与えていない原因には、以下のものも含まれます。
(一)証拠が不十分
馳名商標であるかどうかを認定する際には、次の要素が考慮されます。(1)関連公衆の当該商標に対する認知度 (2)当該商標の使用継続期間 (3)当該商標のあらゆる宣伝活動の継続期間、程度と地理的範囲 (4)当該商標が馳名商標として保護を受けた記録 (5)当該商標が馳名であるその他の要素。
当事者は、その商標が馳名商標であることを証明する責任を負い、それを証明するために十分な証拠を提供する必要があります。当事者の請求に基づいてその商標を馳名商標として保護を与えていない事件では、当事者が提供した証拠は、その商標が既に馳名商標であることを証明するには不十分であることが多いです。
また、注意すべきのは、食品、日常用品、飲料品、酒類などの商品の関連公衆の範囲が広くて、ほぼすべての一般消費者を含んでいるため、商標局又は裁判所が通常より厳しい証拠基準を取っています。証拠の種類だけでなく、内容上も広範囲かつ長期間にわたる商標の知名度を証明できるものでなければなりません。提出された証拠が形式的には要件を満たしていても、内容的に基準を満たさない場合、馳名商標の認定請求が認められることができません。
(二)商品又はサービスの差が大きい
馳名商標は区分を越えて保護されますが、全区分で保護されるではありません。馳名商標の区分を越えて保護される範囲は、その商標の知名度や顕著性と密接に関連しており、馳名商標の知名度が高く、顕著性が強いほど、区分を越えて保護される範囲も広くなります。具体的な事件では、商標局又は裁判所は通常、商標の顕著性、知名度、商標標識の類似度、指定商品の状況、関連公衆の重複度と注意度、係争商標出願人の主観的状態などの要素を総合的に考慮し、係争商標の商品又はサービスが馳名商標の保護範囲に含まれるかどうかを認定します。一部の事件では、商標局又は裁判所は、係争商標と引用商標が商品の機能、用途、製造部門、販売ルート、消費者層、またはサービスの目的、内容、方法、対象などの面で大きな差があると判断し、引用商標に馳名商標の保護を与えていません。
(三)商標標識の差が大きい
一部の事件では、商標局又は裁判所は、係争商標の標識と引用商標は大きな違いがあり、商標法第13条に規定されている「複製、模倣、翻訳」に該当しないと判断しました。