日付:2026-08-25
公開日付:2026-08-25
―――中国ECプラットフォームにおける模倣品対策実務マニュアル(2026年版)
対象法域の明示:本記事は中国(中国本土のECプラットフォームおよび中国の法制度)を対象としています。日本の法制度への言及は比較のためのものです。
この記事の要点
•タオバオ・拼多多など中国国内向けECサイトの模倣品削除は、中国で有効な権利(中国での商標登録・著作権登録など)を根拠とする通報(notice & takedown)が基本ルートです。日本の商標登録だけでは、原則として削除根拠になりません。
•通報窓口は、タオバオ・天猫・1688 などアリババ系が「アリババ知的財産保護プラットフォーム(IPP)」、拼多多が同社の知的財産保護プラットフォームが窓口となります。権利者アカウントの権利証明認証を済ませれば、以後はリンク単位で通報できます。
•プラットフォームの削除義務は中国「電子商務法」(2019年1月施行)第42条〜第43条のノーティス・アンド・テイクダウン規定に基づきます。販売者から非侵害の声明が提出された場合、権利者側が15日以内に行政申立てまたは提訴等の措置を取らないと、削除措置が解除され得る点に注意が必要です。
•通報の前に、タイムスタンプ等による証拠の固定(出品ページ・販売数・価格の保全)を行うのが実務の鉄則です。削除に成功するとページ自体が消え、損害立証の証拠も消えます。
•リンク削除は「刈り取り」にすぎません。再出品が続く場合は、モニタリングツールによる常時モニタリング+一括通報、悪質出品者の製造元の特定→行政摘発、税関登録(水際措置)、訴訟までを組み合わせることで根絶に近づきます。
なぜ削除依頼の前に「中国での権利確認」が必要なのですか?
中国のECプラットフォームは、通報者が中国で有効な権利者であることを確認してから削除に動くためです。知的財産権は国ごとに成立する属地主義を取るため、日本での商標権・意匠権は中国国内では権利として主張できません。
実務上の目安は次のとおりです。

したがって、侵害品を確認した後に対応措置を講じるようでは、実効性のある対応は困難でございます。中国国内での商標登録出願(必要区分の網羅)ならびにパッケージ及びキャラクターに関する著作権登録を予め完了しておくことが、削除対応のスピードに直結します。

図 1|削除通報に使える権利・使えない権利(中国国内向けEC)
アリババIPP・拼多多への削除申立て手順は?
「アカウント認証 → 権利証明の登録 → 侵害リンクの通報 → プラットフォーム審査 → 削除」の5ステップになります。権利者認証を1回済みましたら、2回目以降はリンクを直接通報することが可能となります。
1.アカウント作成と権利者認証:アリババ系はアリババ知的財産保護プラットフォーム(IPP)に権利者アカウントを作成し、会社証明と権利証明(中国商標登録証、著作権登録証など)をアップロードして、権利認証を行います。審査には数営業日程度かかるのが実務上の目安です(時期・書類の不備により変動します)。
2.侵害リンクの特定と証拠固定:対象リンクのURL・出品者名・販売数・価格を記録し、タイムスタンプ(可信時間戳)等で先に証拠を固定します。中国のタイムスタンプ取得は低コストで、後の損害賠償請求・行政申立ての証拠になります。
3.通報(投訴)の提出:リンク単位で侵害類型(商標権侵害・著作権侵害等)を選択し、侵害理由を簡潔に記載します。「本物と異なる点」の具体的指摘(ロゴの形状差、正規品にない型番など)があると審査が通りやすくなります。
4.プラットフォーム審査と出品者の反論:電子商務法第42条に基づき、プラットフォームは通報を出品者に転送し、削除等の必要措置を講じます。出品者が非侵害の声明(反論)を提出した場合の対応は次節のとおりです。
5.削除と記録:削除結果はダッシュボードで管理し、同一出品者の再犯記録を保持できます。再犯履歴は、プラットフォーム側のペナルティ(店舗閉鎖等)の判断材料となるだけでなく、後の行政手続・司法手続において悪質性を立証する際の証拠として使えます。
拼多多も同様に、権利者向けの知的財産保護プラットフォームで権利証明を登録したうえでリンク通報を行います。
プラットフォームごとに要求書式・審査基準が異なるため、複数プラットフォームに対応する場合、通報用テンプレートを事前に整備しておくことで、作業効率が大幅に向上します。
出品者から反論(反通知)が来たらどうしますか?
電子商務法第43条により、出品者の非侵害声明がプラットフォーム経由で権利者に転送された後、権利者が15日以内に行政機関への申立てまたは裁判所への提訴を行ったことをプラットフォームに通知しないと、削除等の措置は解除されます。
つまり、反通知が提出された場合は、単なる通報では完結しない案件となります。実務上は、以下のいずれかの対応を選択することになります。
•エスカレーション:証拠が固まっている悪質案件は、市場監督管理局への行政申立て(行政摘発)または民事訴訟に進み、その事実をプラットフォームに通知して削除状態を維持する。
•証拠補強のうえ再通報:初回通報の証拠が弱かった場合、購入テスト(サンプル購入と真贋鑑定)や公証・タイムスタンプによる証拠固定を行ったうえで再度通報する。
なお、根拠のない通報を悪意で行うと通報者側が賠償責任を問われ得る旨も同法に規定されています。真贋が不明確な案件は、通報の前に専門家の確認を入れることで、リスクを回避できます。
通報だけでは根絶できない場合、どんな打ち手がありますか?
「モニタリングの常時化」「源頭(製造元)への遡及」「水際・司法での封じ込め」の三層を組み合わせます。リンク削除だけでは、同じ工場が別店舗で出品し直す「モグラ叩き」から抜け出せません。
•常時モニタリング+一括通報:主要ECプラットフォームを対象とするモニタリングシステムで新規出品を自動検知し、優先度(販売数・価格)を付けて一括通報します。Kangxin のプラットフォームは中国主要ECを含む150以上のECプラットフォームを監視対象とし、通報実績をダッシュボードで可視化できます——社内報告(上長・経営層向け)にそのまま使える点が、調査会社への都度委託との違いです。
•源頭の特定と行政摘発:売れ筋の模倣品リンクから、購入テスト・物流情報・出品者情報をたどって製造元・倉庫を特定し、市場監督管理局による行政摘発(立入検査・押収・罰金)につなげます。行政ルートは訴訟より速く、在庫と金型を押さえられるのが利点です。
•税関登録(水際措置):中国税関に権利を登録しておくと、模倣品の輸出時の差止めが機能します。中国から第三国への模倣品流出(日本のフリマアプリや東南アジアECへの流入)を上流で止める手段として有効です。
•民事訴訟・刑事移送:損害が大きい悪質案件では、取得済みのタイムスタンプや公証証拠を用いて損害賠償請求を検討します。また、偽造品の規模が一定以上に達する場合には、刑事事件として公安機関に移送されるケースもあります。

図 2|中国模倣品対策の三層構造(イメージ図)
よくある質問(FAQ)
Q:日本の商標登録しか持っていません。まず何をすべきですか?
A:中国での商標出願を最優先で行ってください(マドリッド議定書による中国指定も可能です)。審査期間は約4か月(CNIPA公表の目安。2026年8月時点、最新の公表値をご確認ください)です。登録までの間は、パッケージや商品写真について中国での著作権登録・タイムスタンプで補助的な削除根拠を作る方法があります。
Q:通報から削除までどのくらいかかりますか?
A:権利者認証が済んでいる状態で、明白な商標権侵害案件であれば数営業日が実務上の目安です。ただし案件の性質(意匠・特許系は長め)、証拠の質、出品者の反論の有無により大きく変わります。
Q:削除してもすぐに再出品されてしまいます。これに意味はあるのでしょうか?
A: 単にリンクを削除するだけでは再出品を防ぐことはできません。しかし、削除記録を蓄積することで、出品者アカウントの停止や店舗閉鎖といったプラットフォーム側の措置につながるほか、悪質性の高い案件を行政摘発や訴訟に発展させる際の立証材料としても活用できます。したがって、「常時監視+一括通報」によって対応コストを抑えつつ、より上位の措置へと進むのが、実務上の定石です。
Q:著作権登録と、どのように使い分ければよいですか?
A:著作権登録は、中国版権保護センター等による公的な権利証明であり、ECプラットフォームでの通報や訴訟において権利の保有を強力に証明するために行います。一方、タイムスタンプは「その時点でその侵害データが存在した」という事実を低コストかつ即時に証明するための「証拠保全」の手段です。実務では、自社製品のデザインやパッケージなどの「基本素材の権利化」には著作権登録を行い、日々大量に発見される「侵害ページの証拠保全」にはタイムスタンプを活用するなど、目的に応じて使い分けます。
Q:費用はどの程度の金額を見込んでおくべきでしょうか。
A:プラットフォームへの通報自体に公的費用は発生しません。実際に費用がかかるのは、権利化(中国商標出願・著作権登録)、証拠保全(タイムスタンプ・公証)、モニタリングツールの導入、および行政摘発・訴訟の代理対応といった各段階です。
そこで、被害規模に応じて「年間の監視+通報パッケージ」をベースにご提案し、悪質性の高い案件に限って摘発・訴訟へとステップアップする設計にすることで、費用対効果を高めることができます。なお、個別の対応費用については、事前に明示いたします(追加費用は発生いたしません)。
まずは無料の侵害検査から
自社ブランドがタオバオ・拼多多・1688など中国ECプラットフォーム上で、どの程度模倣品被害に遭っているのか――まずはその全体像を可視化することをお勧めします。Kangxin IPプラットフォームでは、対象プラットフォーム上の疑義リンクを洗い出した無料の侵害検査レポートをご提供しております。当該レポートは、そのまま社内報告資料としてもご活用いただけます。
さらに、150以上のECプラットフォームに対応した監視ダッシュボードでの継続モニタリング、一括通報、そして行政摘発・税関登録に至るまで、中国現地での実行を日本語窓口にてワンストップでサポートいたします。対応にあたっては、30年の中国実務経験を有する弁護士・商標代理人チームが一貫して担当いたします。
特許事務所・法律事務所の皆さまへ:貴所のお客様の中国模倣品対策について、貴所を通じたご依頼(転委託)を固定料金・SLA付きでお受けしています。お客様への直接接触は一切行いません。
本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、法的助言を構成するものではありません。プラットフォームの通報規則・官費・期間は変動します(本文の数値は2026年8月時点、各公式発表をご確認ください)。個別の案件については、Kangxin の専門アドバイザーにご相談ください。