日付:2026-07-06
公開日付:2026-07-06
欧州連合知的財産庁の現行実務を反映した最新版の欧州連合商標(EUTM)および登録欧州連合意匠(EUD)審査ガイドラインが、2026年7月1日に発効した。利害関係者および欧州連合知的財産庁(EUIPO)運営委員会との徹底的な協議を経て、同ガイドラインは2026年6月30日、庁長官により決定第EX-26-09号をもって採択された。
主な変更点の概要は以下のとおりである。
登録EU意匠出願の審査
「意匠の表現の要件および手段に関する共同コミュニケーション」の枠組みで合意された事項など、図的表現の要件が更新された。これには「十分に明確な表現」に関する改正が含まれ、同要件は現在、出願日の要件となっている。
静的表現、アニメーション表現または動的表現を区別する、意匠の表現の種類および手段に関する新たな項目が導入された。図の数と種類、および許容されるビジュアル・ディスクレーマーの種類に関する新規則も更新された。
登録不可理由の節には、パリ条約第6条の3に基づく追加的理由(EU拡大の場合の適用を含む)が盛り込まれた。
EUDR第48条第4項に基づく製品表示に対する異議に関する新たな実務は大幅に再構成された。現在では、出願人が出願時に「職権による変更」オプションを選択していない限り、庁が変更を提案し出願人の回答を待つこととなる。
登録の前後においてEUDへの軽微な変更を認める補正および変更の要件が明確化された。
意匠無効審判請求の審査
この節全体が、より高い明確性を提供するために再構成された。特に、オンライン情報源からの証拠に関する節が導入された。無効手続における先行権利および国内法の内容の立証方法についても説明されている。
各理由の受理要件が更新され、すべての無効理由が近時の判例法を反映して改訂された。無効手続における先行意匠権との抵触に関する新たな実務も説明されている。
優先的に処理される新たな無効手続が導入された。この節は、実務の発展と実例の蓄積に伴い、ガイドラインの今後の改訂においてさらに拡充される予定である。
欧州連合商標の審査
B部 審査
関連する立法改革および2025年6月25日の一般裁判所判決(T-239/23、NERO CHAMPAGNE / Champagne (GI)、EU:T:2025:638)を踏まえ、先行する地理的表示(GI)に関する庁の実務の包括的な見直しが盛り込まれた。その要点は以下のとおりである。
(a) EUTMR第7条第1項(j)に基づく拡大された職権審査に関する実務変更が明確化された。同審査はもはや同一・比較可能な商品および関連サービスに限定されず、それを超え得る。庁が関連情報を有する場合、GIの名声の利用、弱体化、希釈化または毀損を理由とする拒絶も可能である。
(b) GIが同一商品および関連サービスについてEUTMにおいて「使用」されている場合に、指定商品の限定によりどの程度拒絶を克服できるかが説明された。同様に、限定による拒絶の克服は覆され得る推定であることも明確化された。
(c) 「使用」または「想起(evocation)」を構成する場面が明確化された。
(d) 次の場合には、関連GI産品への限定によっても拒絶を克服できないことが明確化された。(i) GIがあらゆる商品・サービスについてEUTMにおいて「想起」される場合、または (ii)「GI産品が原料、部品もしくは構成要素である」加工品・製造品についてGIがEUTMにおいて「使用/想起」される場合。
(e) Nero Champagne判決を受け、関連法令における「誤認を生じさせる表示または行為」の範囲が明確化された。
(f) 「手工芸品および工業製品のGI」(CIGI)に関する規則(EU) 2023/2411の実施については、特にEUのGI登録簿、庁の新たな役割、保護範囲、先行する国内権利、およびEUのGI制度の網羅的性質が扱われている。
(g) 外部からのフィードバックを受けた一般的な内容更新として、特に一般名称・慣用語、「欧州の消費者」の概念、出願人の同一性、限定から生じる推定、および比較可能な商品に関する明確化が行われた。
(h) GI産品固有のロゴ(当該産品の特定の表示規則として製品明細書に含まれるロゴ)からなる団体EUTMに関する実務について、庁は、かかる標章がGIとして認識され団体商標として認識されないという理由による拒絶を一律には行わないこととなった(第4節絶対的拒絶理由第15章欧州連合団体標章)。
C部 異議申立
EUのGI登録簿に関する庁の新たな役割の説明が加えられ、また、異議申立手続におけるEUのGIの立証が、EUのGI登録簿の情報に対する庁の職権知悉およびGIviewデータベースの「拡張データ」の利用により、どのように容易になり得るかが説明された。
特に、既存または確立されたCIGIのEUのGIとしての承認に関する明確化が導入された。EUのGIは独自の優先日を有する新たな権利であるため権利の移転は生じないこと、および規則(EU) 2023/2411第70条第3項に基づく国内保護の延長の可能性が説明されている。
2025年9月24日の新判例(T-406/24、PriSecco / Prosecco、EU:T:2025:893)が、第3.1.2項「想起、模倣、濫用ならびに誤認を生じさせる表示および行為」に追加された。
異議申立の基礎となる先行権利は決定日まで有効に存続しなければならないという庁の長年の実務を確認した、2026年2月5日の司法裁判所判決(C-337/22 P、Ape tees(図形)/ DEVICE OF APE HEAD(図形)ほか、EU:C:2026:71)が反映された。
新たな実務では、異議申立人がEUTMR第8条第4項の下で不適格な先行権利を援用した場合、異議申立は(従来のような立証不十分としてではなく)不受理として却下され、手続のより早期の終結が可能となる。
期間延長(2回目以降の請求)については、実務変更により、当事者はさらなる延長請求の際に「裏付け証拠」を提出する必要がなくなった(EUTMDR第68条)。ただし、請求には引き続き理由を付し、例外的な事情に基づくことが必要である。
当事者の共同請求による中止の延長については、新たな実務の下、(両当事者の請求による)当初6か月間の中止の後、その後の共同延長請求は18か月間(またはEUTMDR第71条第2項に従い最長2年まで)自動的に認められる。当事者はいつでも離脱できる。
近時の判例法に沿い、文字商標の比較における不規則な大文字・小文字使用の影響に関する新実務として、大文字・小文字の使用は文字商標の類似性評価に影響を与えないこととなった。その結果、大文字・小文字のみが異なる文字商標は同一とみなされる。
混同のおそれの分析における単一文字の固有の識別力の程度の評価に関する近時の判例法を受け、様式化されていないか、わずかに様式化されているにすぎない単一文字は、それ自体では弱い識別力しか有しないと扱われることとなった。
2025年9月10日の一般裁判所判決(T-425/24、pasta ZARA Sublime(図形)/ ZARAほか、EU:T:2025:849)は、EUTMR第8条第5項に基づく「正当な理由」の抗弁を適用する基準についてさらなる指針を示しており、ガイドラインに反映された。
商標が広範な商品または役務の区分について登録されている場合に関連する、真正使用の分析における商品・役務のサブカテゴリーの評価および定義について、より包括的な説明と判例法からの例が盛り込まれた。
D部 取消・無効
拡大審判部の2020年2月11日決定(R 2445/2017-G、Sandra Pabst)が定めた基準および例外的事情に基づき、法または手続の濫用による不使用取消請求の不受理に関する新たな項目が設けられた。
また、取消日の繰上げ請求は「正当な利益」に基づく必要はない(EUTMRはこれを厳格には要求していない)という新実務が反映された。
E部 登録簿の操作
拡大審判部の2023年9月18日決定(R 1508/2019-G、Zara)を受け、不使用によるEUTM/国際登録の取消後に、出願人が当該EUTM/国際登録は関連加盟国の法律に従って真正に使用されていたと主張する場合(EUTMR第139条第2項(a))の転換請求の審査に関する新実務を定める新たな節が追加された。
商標および意匠に共通する実務
A部 一般規則
EUD手続において庁に宛てた通信は、電子的手段によってのみ提出できる。2026年7月1日以降、郵便または宅配便による提出は受領されなかったものとみなされ、その旨が送付者に通知されるという明確化が追加された。提出物は送付者に返却されず、送付者が自ら回収しない限り30日後に廃棄される。
郵送による提出が認められないため、EUD手続においてデータ記録媒体はもはや受け付けられない。
2回目以降の期間延長請求の拒絶の場合に庁が追加日数を付与するという段落は削除された。さらに、2回目以降の期間延長を請求する際に裏付け証拠は不要となる。
EUD手続において手続続行(continuation of proceedings)が認められることとなった。この節はこれを反映し、EUTMおよびEUDの双方について、どの期間が除外されるかを明確にしている。
決定がなされた後に手続続行の請求が提出された場合についての明確化が追加された。
第10節の新たな段落は、EUIPOの手続における証拠および立証責任に関する基本概念と規則を説明している。
E部 登録簿の操作
EUD手続における移転登録の申請は、電子的手段によってのみ提出できる。
EUD手続において、特定の製品範囲に限定されたライセンスを登録する可能性が導入された。
背景
EUIPOの商標および意匠の実務は、定期的に更新される一連のガイドラインに反映されており、各種手続を担当する庁職員と庁のサービスの利用者の双方にとって実務上有用であることを意図している。ガイドラインは、EUTMおよびEUD制度の利用者、ならびに庁の審査実務に関する最新情報の把握を望む専門アドバイザーにとって主要な参照資料である。ガイドラインには、最も頻繁な場面における庁の実務を反映して作成された一般的指針が含まれており、常に個々の事案の特殊性に応じて適用されなければならない。
出典:欧州連合知的財産庁(EUIPO)ウェブサイト(原文は無料で公開)、2026年7月1日 – https://www.euipo.europa.eu/en/news/entry-into-force-of-the-2026-edition-of-the-guidelines-for-examination-of-eutms-and-euds。
本記事は英語原文の忠実な全文日本語訳であり、EUIPOウェブサイトの法的通知に基づき、同一条件の下で再配布が可能である。