営業秘密侵害行為及び侵害責任の認定

日付:2026-07-24

出所:最高人民法院知的財産権法廷

作者:

分野:著作権;その他


国/地域:中国

公開日付:2026-07-24

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―(2022)最高法知民終1592号

【裁判要旨】

1.被疑侵害者がその先行して実施した営業秘密侵害行為に基づき、既に営業秘密を不法に取得し使用しており、権利者の提出した証拠により被疑侵害者に再度の実施行為があることを一応証明でき、被疑侵害者が反証するに足りる証拠を提出できない場合、被疑侵害者が営業秘密侵害行為を継続して実施しているとの権利者の主張は成立すると認定できる。

2.従業員が元の勤務先に在職中、配偶者等の事件外の者による名義株保有の方式で会社を設立し、営業秘密侵害行為の実施に関与した場合、当該従業員と会社は共同不法行為を構成し、連帯責任を負うべきである。

3.コンピュータソフトウェアと特定のデータが唯一の対応関係を有し、両者を分割して使用できない場合において、現有の証拠により被疑侵害者に特定のデータを使用した事情があると認定するに足りるときは、同時に当該コンピュータソフトウェアを使用したことを併せて認定できる。

4.権利者が権利の主張を怠り又は侵害行為を放任したことを証明する証拠がない場合、被疑侵害者が消滅時効を理由に、提訴日前三年間のみの侵害損害賠償責任を計算すべきであると主張しても、人民法院はこれを支持しない。

【キーワード】

民事 コンピュータソフトウェア著作権侵害 営業秘密侵害 反復侵害 継続的侵害 証明責任 共同不法行為 不法行為責任 賠償責任 時効

【基本的事案】

瀋某集団股份有限公司(以下「瀋某集団」という)、瀋陽透某機械股份有限公司(以下「透某公司」という)は次のとおり主張した。両社は遠心圧縮機の設計・製造のコア技術を有し、研究開発により遠心圧縮機の設計・開発に用いる羽根車モデル基本級データ(以下「基本級データ」という)及び本件ソフトウェア(以下、基本級データと本件ソフトウェアを併せて「本件技術秘密」という)を形成した。瀋陽斯某機械有限公司(以下「斯某公司」という)、瀋陽斯某機械製造有限公司(以下「斯某機械公司」といい、両社を併せて「両斯某公司」という)は、孫某良、印某洋、呉某坡(併せて「三自然人」という)が設立に関与し支配する企業であり、共同して本件技術秘密を不法に取得・使用する行為を実施し、遠心圧縮機を製造して低価格で販売し、巨額の不法利益を得た。よって、両斯某公司及び三自然人が本件技術秘密及び本件ソフトウェア著作権への侵害を停止し、本件技術秘密(本件ソフトウェアを含む)及びその媒体を削除・廃棄し、経済的損失8億元(懲罰的賠償を含む)及び権利保護のための合理的支出500万元を連帯して賠償するよう命じることを請求した。

両斯某公司は次のとおり抗弁した。瀋某集団、透某公司は権利者として本件訴訟を提起する権利を有さず、その主張する技術秘密についても合理的な秘密保持措置を講じていない。両斯某公司は侵害行為を実施しておらず、事件外の者のAソフトウェアを使用して遠心圧縮機の設計と製造を完成した。本件には損害の事実が存在しない。瀋某集団の侵害の主張は既に消滅時効期間を経過している。

法院の審理により次の事実が明らかになった。瀋某集団、透某公司の立証及び二審法院が現地の市場監督管理部門及び公安機関から取り寄せた証拠によれば、両斯某公司の設立後の2008年から2011年の期間において、両斯某公司が不正な手段により瀋某集団、透某公司の遠心圧縮機設計製造図面並びに本件ソフトウェア及び関連する基本級データを実際に取得し、複数台の被疑侵害製品を設計・製造したことを証明するに足りる。当時、両斯某公司の当時の法定代表者は両斯某公司の営業秘密侵害行為を確認し、以後瀋某集団の営業秘密を使用しないことを保証し、斯某公司も2011年10月17日に侵害停止を約束して瀋某集団の宥恕を得て、現地の公安機関は2013年6月20日に事件を取り下げた。しかしながら、両斯某公司はその先行して実施した営業秘密侵害行為に基づき、本件技術秘密を不法に取得・使用し、現在に至るまで継続している。瀋某集団、透某公司は、被疑侵害製品に添付された8部の付属資料に基づき、被疑侵害製品の羽根車コードの命名規則及び瀋某集団、透某公司の主張する技術秘密との対応関係を詳細に説明した。瀋某集団、透某公司の逆算による証明は、上記付属資料と同一又は実質的に同一の性能データが得られることを示した。両斯某公司は、双方の製品の命名規則の一致性について合理的な説明ができず、反証するに足りる証拠も提供できなかった。

一審法院は2021年11月15日、民事判決を下した。一、斯某公司、斯某機械公司は本判決発効の日から直ちに瀋某集団、透某公司のB、Q、F、T、U、V、K、LR羽根車モデル基本級データの営業秘密を使用する不正競争行為を停止し(使用停止は当該営業秘密が公衆に知られるに至るまで継続する)、当該羽根車モデル基本級データの媒体を廃棄し、その支配するデータ情報を消去する。二、斯某公司、斯某機械公司は本判決発効の日から10日以内に、瀋某集団、透某公司の経済的損失及び侵害行為制止のために支出した合理的費用として、合計2500万元を共同で賠償する。三、瀋某集団、透某公司のその他の訴訟請求を棄却する。瀋某集団、透某公司と斯某公司、斯某機械公司はいずれもこれを不服とし、それぞれ上訴した。

最高人民法院は2024年12月31日、(2022)最高法知民終1592号民事判決を下した。一、一審法院の民事判決を取り消す。二、斯某公司、斯某機械公司、孫某良、印某洋、呉某坡は直ちに瀋某集団、透某公司の本件技術秘密及び本件ソフトウェア著作権への侵害行為を停止する。すなわち、本件ソフトウェア及び羽根車モデル基本級データの不法な取得、開示、使用、他人への使用許諾を直ちに停止する。三、斯某公司、斯某機械公司、孫某良、印某洋は本判決発効の日から30日以内に、瀋某集団、透某公司の経済的損失164,647,802元及び侵害行為制止のために支払った合理的費用1,500,000元、合計166,147,802元を連帯して賠償する。呉某坡は前述の賠償金のうち3,000,000元の範囲内で連帯賠償責任を負う。四、瀋某集団、透某公司のその他の訴訟請求を棄却する。五、斯某公司、斯某機械公司の上訴請求を棄却する。二審判決は同時に、侵害停止等の非金銭給付義務及び損害賠償の金銭給付義務の履行遅延金を明確にし、侵害者が判決を速やかにかつ全面的に履行するよう促した。

【裁判意見】

法院の発効裁判は次のとおり判断した。(一)侵害の認定について。事件記録中の証拠及び瀋某集団、透某公司の主張する逆算による証明方式によれば、瀋某集団、透某公司が『中華人民共和国不正競争防止法』第32条第2項第1号に定める証明責任を果たしたことを一応証明するに足りるが、両斯某公司は「営業秘密を侵害する行為が存在しないことを証明する」立証責任を果たせなかった。本件ソフトウェアについて、双方当事者はいずれも本件ソフトウェアと基本級データが唯一の対応関係を有し、両者を分割して使用できないことを確認しており、斯某公司も基本級データを他のソフトウェアに用いて選定設計を行う事情は存在しないと明確に主張した。これに基づき、事件記録中の証拠により、両斯某公司が不正な手段により本件ソフトウェア及び基本級データを取得・使用し、本件技術秘密を侵害する侵害行為を実施したと認定するに足りる。両斯某公司の行為は同時に、瀋某集団、透某公司が本件ソフトウェアについて法により享有する著作権をも侵害した。

孫某良、印某洋は瀋某集団に在職中に、他人と共同で斯某公司を設立し配偶者を通じて株式を保有し、瀋某集団と同業競争を行い、公を損ない私を肥やしたものであり、明らかに信義誠実の原則に反する。両名は両斯某公司の実際の株主として、現地の市場監督管理部門及び公安機関がかつて両斯某公司による瀋某集団の営業秘密侵害事件を調査処理した状況を知り又は知り得べきであった。斯某公司が侵害停止を約束し瀋某集団の宥恕を得た状況の下で、孫某良は両斯某公司の大株主及び法定代表者として、なお背信的に、両斯某公司を通じて侵害行為を継続した。印某洋は両斯某公司の設立時から実質的に関与し、後に斯某公司の取締役に就任して遠心圧縮機の設計を担当した。孫某良、印某洋は両斯某公司の株主及び高級管理職として、全過程において両斯某公司の侵害行為を知悉しかつ継続的に関与し、反証するに足りるいかなる証拠も提出できなかったのであるから、両名は両斯某公司と共同不法行為を構成すると認定すべきであり、両斯某公司とともに全部の連帯責任を負うべきである。

呉某坡は瀋某集団に在職中、透某公司設計院の副総エンジニアを務め、遠心圧縮機の設計に関与しプロジェクト責任者を担当し、本件ソフトウェア及び基本級データに接触しこれを知悉しており、特に一部の基本級データはその在職期間中に形成された。事件記録中の証拠は、呉某坡が一定程度両斯某公司の侵害行為に関与し、侵害への幇助を提供したことを証明するに足り、同人は相応の部分について連帯責任を負うべきである。

(二)賠償責任について。瀋某集団、透某公司は二審において最終的に、侵害損害賠償額は現地の公安機関が事件を取り下げた日(2013年6月20日)から一審の法廷弁論終結の日(2021年5月21日)まで計算すべきであると主張した。両斯某公司及び三自然人は、双方は同業競争関係にあり、瀋某集団、透某公司は両斯某公司が一貫して遠心圧縮機の生産・販売経営活動に従事していることを明らかに知っていたのであるから、本件訴訟の提起は既に消滅時効期間を経過していると主張した。これについての分析は次のとおりである。瀋某集団はかつて2011年5月10日に現地の工商局に対し、両斯某公司及び孫某良、印某洋、石某松がその営業秘密を侵害していると申し立て、斯某公司は2011年10月17日に侵害停止を約束して瀋某集団の宥恕を得て、現地の公安機関は2013年6月20日に事件を取り下げた。しかしその後、両斯某公司は約束を顧みず、なお侵害行為を継続して長年にわたり実施し、巨額の不法利益を得た。技術秘密侵害行為及びコンピュータソフトウェア侵害行為は往々にして強い隠蔽性を有し、瀋某集団、透某公司は一審法院に弁護士調査令を申請した後も関連する侵害証拠を取得できなかったのであり、このことも本件において侵害行為に関する直接証拠の取得が客観的に困難であるという現実的困難が存在することを示している。瀋某集団、透某公司と両斯某公司がいずれも遠心圧縮機の生産・販売等に従事していることのみをもって、瀋某集団、透某公司がその権益が損害を受けていることを早くから知り又は知り得べきであったと認定するには足りない。瀋某集団、透某公司は2020年5月6日に本件訴訟を提起し、2013年6月20日から2021年5月21日までの期間に発生した被疑侵害行為について権利を主張したのであり、これは法律の規定に違反せず、その訴訟請求の範囲も超えていない。より重要なことは、権利者が侵害行為の発生と継続を放任したと認定できる証拠又は合理的理由が確かに存在しない限り、侵害行為が長年継続したことにより、両斯某公司が「消滅時効」によって不法利益を得る結果となってはならないことである。以上により、両斯某公司の本件消滅時効に関する抗弁は支持しない。

本件では、二審法院が現地の市場監督管理部門から取り寄せた両斯某公司の企業年度報告書における利益総額を本件損害賠償額算定の基礎とし、相応に懲罰的賠償を確定することができる。両斯某公司の2013年6月20日から2021年5月21日までの期間の利益総額は30,954.53474万元であり、そのうち、2019年4月23日(現行不正競争防止法の改正により懲罰的賠償規定が導入された施行日)から2021年5月21日までの利益総額は11,964.0329万元である。これに基づき、両斯某公司が本件で負うべき賠償責任は16,464.7802万元であり、計算式は、補償的賠償(30,954.53474万元×30%の寄与率)+懲罰的賠償(11,964.0329万元×30%の寄与率×2倍)=16,464.7802万元である。孫某良、印某洋は当該賠償額について全部の連帯賠償責任を負い、呉某坡はそのうち300万元について連帯賠償責任を負う。

【関連索引】

『中華人民共和国民法典』第179条第1項、第188条、第1168条

『コンピュータソフトウェア保護条例』第24条第1項第1号

『中華人民共和国不正競争防止法』第9条、第32条

出典:最高人民法院知的財産法廷、2026年7月23日、原文リンク:https://ipc.court.gov.cn/zh-cn/news/view-5961.html

本記事は中国語の原文を元に日本語へ翻訳(仮訳)されたものです。