秘密保持審査義務違反の判断

日付:2026-07-24

出所:最高人民法院知识产权法庭

作者:

分野:特许


国/地域:中国

公開日付:2026-07-24

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――(2022)最高法知行終255号

【裁判要旨】

既に権利付与された中国特許が、特許法の秘密保持審査に関する規定に違反したことにより無効とされるべきか否かを判断するにあたっては、中国特許出願に先立って国外で出願された特許技術方案の実質的内容が中国国内で完成したか否かを審査すべきである。技術方案の実質的内容の完成地の認定は、事件記録中の証拠に基づき、技術方案の形成過程を審査し、当該分野の技術研究開発の法則等を考慮して総合的に判断すべきである。

【キーワード】

行政 発明特許権無効 秘密保持審査 技術方案の実質的内容

【基本的事案】

米国某社は、特許番号20131032****.8、名称「体外医療診断装置及びシステム」の発明特許(以下「本特許」という)の特許権者である。2018年6月14日、広州某社は本特許に対し中国国家知識産権局に無効宣告請求を提起し、主な理由として、本特許の技術方案は広東省某科学研究プロジェクトの成果であり、米国某社は秘密保持審査を申請せず、中国で完成した発明創造について無断で米国に特許出願を行い、特許法の秘密保持審査に関する規定に違反したこと、また本特許は米国某社が同一の技術方案により中国で出願し権利付与を受けた特許であり、特許権が付与されるべきでないことを主張した。中国国家知識産権局は2019年7月30日、第41277号無効宣告請求審査決定(以下「被訴決定」という)を下し、本特許権の有効を維持した。広州某社はこれを不服として一審法院に提訴し、被訴決定の取消し及び中国国家知識産権局に審査決定を改めて行うよう命じることを請求した。

一審法院は2021年12月28日、広州某社の訴訟請求を棄却する行政判決を下した。広州某社はこれを不服として上訴した。最高人民法院は2024年3月14日、(2022)最高法知行終255号行政判決を下し、上訴を棄却し、原判決を維持した。

【裁判意見】

法院の発効裁判は次のとおり判断した。2009年施行の特許法第20条第1項は、「いかなる単位又は個人も、中国で完成した発明又は実用新案について外国に特許出願する場合、事前に国務院特許行政部門に報告し秘密保持審査を受けなければならない。秘密保持審査の手続、期限等は国務院の規定に従い執行する」と規定する。同条第4項は、「本条第1項の規定に違反して外国に特許出願した発明又は実用新案について、中国で特許出願した場合、特許権を付与しない」と規定する。2010年改正の特許法実施細則第8条第1項は、「特許法第20条にいう中国で完成した発明又は実用新案とは、技術方案の実質的内容が中国国内で完成した発明又は実用新案をいう」と規定する。特許制度は「公開と引き換えに保護を与える」制度であり、原則として特許出願する技術方案は公開されなければならない。上記の秘密保持審査に関する規定の立法目的は、国家の安全又は国家の重大な利益に関わる発明創造が特許出願により公開されて国家利益を損なうことを回避することにある。上記規定によれば、特許出願人が秘密保持審査を受ける義務を負うか否かを判断する法的基準は、技術方案の実質的内容が中国で完成したか否かである。

(一)技術方案の実質的内容の確定について

特許出願行為が2009年施行の特許法第20条第1項、第4項の規定に違反するか否かを判断するには、まず特許出願に係る技術方案の実質的内容を確定すべきである。

第一に、審査の基礎について。既に権利付与された特許が2009年施行の特許法第20条第1項、第4項の規定に違反したことにより無効を宣告されるべきか否かを判断するには、中国特許出願に先立って外国で提起された特許出願の技術方案の実質的内容が中国で完成したか否かを審査する必要がある。したがって、原則として外国に提出した特許出願書類を審査の基礎とすべきである。中国特許出願と外国特許出願の技術方案が実質的に同一であることを確認できる場合には、中国特許出願書類を審査の基礎とすることができる。

第二に、技術方案について。前述のとおり、秘密保持審査制度の設立は、国家の安全又は国家の重大な利益に関わる発明創造が特許出願により公開されることを防止するためである。したがって、秘密保持審査の内容は特許出願書類中の全部の内容であるべきであり、特許請求の範囲に記載された内容に限られない。

最後に、実質的内容について。発明創造が特許権を付与され保護を受ける基礎は、その技術革新への貢献にある。秘密保持審査を申請する義務に係る「技術方案の実質的内容」とは、発明又は実用新案が先行技術に対して改良を行った内容であり、この改良により発明又は実用新案は解決しようとする技術的課題を解決し、達成しようとする技術的効果を実現する。「実質的内容」の判断において、対比対象となる先行技術は、特許明細書に記載された背景技術であってもよく、特許権者又は発明者が発明の起点として陳述した先行技術であってもよい。発明者は発明創造の実質的特徴に対して創造的貢献をした者であり、発明者が陳述した先行技術が明細書中の背景技術よりも特許が保護を求める技術方案に近い場合には、発明者が陳述した発明点を主要な根拠として技術方案の実質的内容を判断することができる。

本件において、本特許明細書の背景技術における先行技術の記述は比較的概括的であるが、本特許の第一発明者は一審において証人として出廷して証言し、先行技術と対比して本特許の三つの発明点を陳述した。本特許明細書の背景技術の記述と対比すると、発明者が発明点を陳述する際に依拠した先行技術は本特許が保護を求める技術方案により近いため、発明者が陳述した発明点を主要な根拠として本特許技術方案の実質的内容を確定することができる。

本特許の従属請求項の付加的技術的特徴が本特許技術方案の実質的内容を構成するか否かについて。従属請求項の付加的技術的特徴が技術方案の実質的内容を構成し得るか否かは、主として当該技術的特徴の先行技術に対する貢献の程度による。本特許の従属請求項の付加的技術的特徴は関連部品の機能及び構造に対するさらなる限定であり、事件記録中の証拠はそれが新たな実質的内容を構成することを証明できないため、これを本特許の実質的内容とは認定しない。

(二)技術方案の実質的内容が中国で完成したか否かについて

技術方案の実質的内容の完成地の認定は、事件記録中の証拠に基づき、技術方案の形成過程、発明者が技術方案の実質的内容を完成した時の所在地等を審査し、当該分野の技術研究開発の法則を考慮して、総合的に判断すべきである。

本件において、まず、本件技術方案の形成過程から見ると、本特許の発明者の連絡メールに記録された技術内容によれば、2010年6月末までに本特許の発明者は既に本特許の技術構想を形成し、前述の本特許の三つの発明点を含む関連技術方案を完成していたことが分かる。反対の証拠がない状況において、本特許技術方案の実質的内容は2010年6月末以前に既に完成していたと認定できる。次に、発明者が技術方案の実質的内容を完成した所在地から見ると、本特許の三名の発明者のパスポート情報に基づき、前述の本件技術方案の形成過程と併せて、本件技術方案の実質的内容は中国で完成したものではないと認定できる。最後に、当該分野の技術研究開発及び産業化の法則から見ると、医療機器類の発明創造は、ニーズの確定、発明構想の形成、技術方案の実質的内容の完成から、技術方案のさらなる改良・完善、臨床研究及び産業化に至るまで、往々にして数年の時間を要する。一定の産業化研究及び試験を経た後に、秘密保持措置を講じ、上市の見通しを有する技術方案について特許出願を行うことは、客観的に技術方案が公有領域に入る時期を延ばすことができ、当該分野の技術研究開発及び産業化の法則にも合致する。広東省某科学研究プロジェクトに記載されたプロジェクトの背景、進度等の状況と併せると、本特許技術方案の実質的内容は広東省某科学研究プロジェクトの立項時に既に完成しており、同プロジェクトは関連技術方案の産業化の過程であったと認定でき、現有の証拠は本特許技術方案の実質的内容が中国国内で完成したことを証明するに足りない。米国某社の特許出願行為は2009年施行の特許法第20条第1項、第4項の規定に違反していない。

【関連索引】

『中華人民共和国特許法』第19条第1項、第4項(本件に適用されたのは2009年10月1日施行の『中華人民共和国特許法』第20条第1項、第4項である)

『中華人民共和国特許法実施細則』第8条第1項(本件に適用されたのは2010年2月1日施行の『中華人民共和国特許法実施細則』第8条第1項である)

出典:最高人民法院知的財産法廷、2026年7月17日、原文リンク:https://ipc.court.gov.cn/zh-cn/news/view-5931.html

本記事は中国語の原文を元に日本語へ翻訳(仮訳)されたものです。