日付:2026-07-24
公開日付:2026-07-24
――(2025)最高法知行終177号
このほど、最高人民法院知的財産法廷は、実用新案特許権無効行政紛争事件の審理を終結した。二審判決は、実用新案特許の発明思想又は発明目的を直接体現する技術的特徴について、先行技術が相応の技術的示唆を与えておらず、当該分野の周知技術に属することを証明する証拠もない場合、通常、当業者が当該技術的特徴を容易に想到し得ると認定すべきではなく、進歩性評価における「後知恵」を回避すべきであると指摘した。
本件は、特許権者を某甲建材(中国)有限会社(以下「某甲中国会社」という)及び江蘇某乙新型壁材有限会社(以下「江蘇某乙会社」という)とする、名称を「一体式機械連結継手装置」とする実用新案特許(以下「本特許」という)に関するものである。何某は本特許に対し無効宣告請求を提起し、主な理由として本特許が進歩性を具備しないと主張し、以下の証拠を提出した。証拠1:公開番号CN109869386A、名称「連結挿入棒、連結継手装置及びプレストレスト・プレハブ部材」の発明特許出願。証拠3:公開番号CN109653195A、名称「機械継手」の発明特許出願。
被訴決定は次のとおり判断した。本特許の請求項1は最も近い先行技術である証拠1と比較して相違する技術的特徴を有し、当該特徴に基づき、本特許が解決しようとする技術的課題は、取付時にばね底部の接触位置が平坦でないことによりばねが傾き取付上の不安全要素が生じることを如何に防止し、継手の取付品質及び取付効率を高めるかである。証拠3における栓体は、客観的に、ばね底部が鉄筋アプセット頭部や下ナット内壁等の他の構造の影響を受けて傾く問題を回避する作用を果たし得るものであり、相応の技術的示唆を与えている。証拠3の示唆の下で、当業者は証拠1の構造を改良する動機を有し、弾性要素の下部に外周に雄ねじを有する栓体を設け、証拠1の中間ナットの下部を下方に延長し、その下部に雌ねじを有する栓体取付腔を設けることにより、ばね底部が他の構造の影響を受けて平坦でなくなる現象を防止する。さらに、筒状の構造すなわち封筒(シールスリーブ)で栓体を代替することは、ばね底部の当接部材の構造形式上の単純な変形にすぎず、これを基礎とし、かつ証拠3が栓体と位置規制連結スリーブとのねじ結合を開示していることから、当業者は、位置規制連結スリーブの下部と封筒の上部にいずれもねじを設け、封筒がねじにより位置規制連結スリーブと結合して一体を形成することを容易に想到し得る。また、施工中に不純物が封筒内部に堆積することを回避するため、封筒の下部に貫通孔付きの位置規制台を設け、弾性要素を位置規制台上に置くことも当該分野の常用手段に属し、創造的労力を要せず、予想外の技術的効果も生じない。封筒底端がアプセット頭部又は下ナット底部の不純物構造等と干渉しないことを保証するため、封筒底端と下ナット底端との間に隙間を残すことは、当業者が製造・組立の必要に応じて行う常用の選択であり、技術的効果は予測可能である。したがって、証拠1に証拠3及び周知技術を組み合わせて得られる技術方案も「一体式構造」に属し、取付効率を高める技術的効果も予測可能であり、請求項1は進歩性を具備しない。請求項2~10は、その引用する請求項が進歩性を具備しない場合、同様に進歩性を具備しない。これに基づき、本特許権を全部無効とする旨を宣告した。
特許権者は被訴決定を不服として行政訴訟を提起した。一審法院は、被訴決定の「本特許の請求項1は証拠1、証拠3及び周知技術の組合せに対して進歩性を具備しない」との認定に誤りがあると判断し、被訴決定を取り消す判決を下した。
最高人民法院は二審において次のとおり判断した。本特許の請求項1と証拠1とを比較した相違技術的特徴(1)は、本特許の継手装置が一体式構造であり、封筒が下ナット内に取り付けられ、位置規制連結スリーブの下部と封筒の上部にいずれもねじが設けられ、封筒がねじにより位置規制連結スリーブと結合して一体を形成し、封筒底端と下ナット底端との間に隙間が残され、封筒の下部に貫通孔付きの位置規制台が設けられ、弾性要素が位置規制台上に置かれることである。本件の核心的争点は、証拠3が相違技術的特徴(1)について相応の技術的示唆を与えているか否かである。この点につき、二審は次のとおり判断した。
第一に、証拠3が主に解決する技術的課題は、本特許が実際に解決する技術的課題と異なる。証拠3の明細書の背景技術部分の記載によれば、証拠3が解決するのは、挿入棒が偏心して挿入される際に一部の楔片が先後してばねと接触することによりばねが傾き、ひいては機械継手の連結が不確実となり、さらには連結が失敗するという技術的課題である。証拠3はばねの傾きが継手の挿入失敗を招くことに着目しているものの、そのばねの傾きを招く原因は、本特許における、挿入棒の挿入時にばね底部の接触位置が平坦でないことによりばねが傾くこととは同一でなく、このため証拠3が主に解決する技術的課題は本特許が実際に解決する技術的課題と同一ではない。証拠3の背景技術に関する図27、28に示されるばね底部は、栓体構造がない場合にその下方の部材に直接当接しており、仮に客観的にばね底部の接触位置が平坦でない状況が存在し得るとしても、それは証拠3において栓体構造を設けた直接の理由ではない。
第二に、証拠3は、上記の解決しようとする技術的課題に対し、収容位置規制スリーブに摺動溝を設け、楔片とばねを摺動溝内に置くことにより、収容位置規制スリーブの最小内径と挿入頭部の最大外径との間の隙間を小さくして挿入棒の偏心挿入を防止するという手段を採用しており、そこでは、ばねの一端は楔片に当接し、他端は栓体に当接し、第四の構造の栓体は円柱体であって栓体取付腔内に取り付けられている。このことから、証拠3における楔片は分離式構造であって摺動溝内を摺動し、摺動溝が複数の場合、摺動溝は収容位置規制スリーブの内壁上に周方向に分布し、複数の摺動溝が相互に独立していることにより各摺動溝内の楔片とばねは相対的に独立して運動する。証拠3の全体構造は、封筒構造を採用し、位置規制連結スリーブの下部と封筒の上部がねじ結合して一体を形成し、係止筒と弾性要素がいずれも封筒の内腔に装着される本特許の一体式構造と大きく異なる。仮に証拠3における栓体がばねに対して安定的な支持作用を果たし得るとしても、栓体と封筒の両者が機能を発揮する基礎的又は根底にある機序・原理に一定の共通部分があることのみをもって、両者が実質的に同一である、又は相互に代用可能であると直ちに認定することはできない。したがって、証拠3の分離式構造を基礎として、当業者が証拠3から相応の技術的示唆を得て、証拠3の栓体構造を証拠1に適用することは困難である。
最後に、実用新案特許の発明思想又は発明目的を直接体現する技術的特徴について、先行技術が相応の技術的示唆を与えることができず、当該分野の周知技術に属することを証明する証拠もない場合、通常、当業者が当該技術的特徴を容易に想到し得ると認定すべきではない。本特許は一体式継手装置であり、相違技術的特徴(1)はその発明思想を直接体現している。仮に被訴決定のいうように証拠3の栓体構造を証拠1に適用し得るとしても、当業者が、証拠1において栓体をさらに封筒構造に改良し、さらに証拠1の中間ナット下部を下方に延長して封筒とねじ結合して一体を形成するよう改良し、かつ封筒底端と下ナット底端との間に隙間を残すことを容易に想到し得るとの結論を導くことはできない。
二審判決は、実用新案特許の進歩性の評価については、発明と実用新案の進歩性の相違に留意すべきであるほか、当業者が解決しようとする技術的課題に直面し、先行技術に対する認識に基づいて、実用新案特許が保護を求める技術方案を容易に得られるか否かを全面的かつ慎重に評価すべきであり、先行技術から出発して一連の「容易に想到し得る」ステップを経て特許技術方案を導き出すことを回避し、それにより創造的労力を払い、実質的特徴及び進歩を有する実用新案の革新成果が保護されることを確保すべきであると明確にした。
出典:最高人民法院知的財産法廷(執筆者:亓蕾 張剣)、2026年7月17日、原文リンク:https://ipc.court.gov.cn/zh-cn/news/view-5930.html
本記事は中国語の原文を元に日本語へ翻訳(仮訳)されたものです。