日付:2026-08-07
公開日付:2026-08-07
ノルウェー工業所有権庁は、審査業務の支援に人工知能を活用している。AIは時間のかかる作業で審査官を支援し、審査官が法的・専門的判断を要する評価により多くの時間を割けるようにする。案件は常に審査官が確認し、最終決定を下す。
社内チャットボットから審査業務におけるAIへ
ノルウェー工業所有権庁のAIに関する最初の経験は、2024年に社内文書の検索を容易にする社内チャットボットから始まった。
2025年夏には、審査業務で直接使用する最初のAIソリューションを導入した。これは商標分野の書簡起案ツールであり、特定の類型の案件で審査官に理由書の草案を提供するものである。このソリューションで得られた経験は、その後、商標、特許、意匠の各分野における複数のAIソリューションの基礎となった。
AIは審査官を支援する
ノルウェー工業所有権庁は、人工知能に決定を行わせることはない。AIは、理由書の起案、関連情報の取得、分類の提案など、審査業務の様々な部分の支援に用いられる。
AIが生成した情報とテキストは常に審査官が確認し、内容が案件の評価を反映しているかを点検し、結果を使用する前に必要な修正を行う。
商標分野の書簡起案ツール
書簡起案ツールは2025年夏に段階的に導入された。特に、識別力を欠く、又は出願に係る商品若しくは役務を単に記述するにすぎないために商標登録できない案件で使用されている。
ノルウェー工業所有権庁は年間約15,000件の商標案件を処理し、毎年多数の書簡を発送している。出願を認められない場合には、その拒絶理由を明確、正確かつ分かりやすく説明しなければならない。
大量の書面によるコミュニケーションを行う他の多くの組織と同様、当庁は長年、理由書起案の出発点として標準テンプレートを使用してきた。従来、審査官はテキストを手作業で調整していた。書簡起案ツールでは、テキストは審査官が既に行った評価に基づき、個別案件に合わせて作成される。規則と法的評価は従来と同じだが、テキストの起案は迅速になり、内容の一貫性も高まった。
例えば、FRESH JUICEのような標章は、その表現が製品を単に記述するものであり、市場のすべての事業者が類似商品の販売時に使用できるようにしておかなければならないため、飲料について登録することができない。このような案件で、書簡起案ツールは審査官が正確で一貫した理由を構成するのを支援する。
商標分野では、審査業務における情報収集プロセスの一部を自動化する審査ツールも開発中である。このソリューションは、複合語の分析、辞書での意味の検索、インターネット上の関連使用の発見、当庁内部の商標ナレッジベースの検索などを行うことができる。収集された情報は審査官に提示され、審査官が法的評価を行う。このソリューションはまだ開発中である。
専門分野を横断するAI
現在、商標分野での経験を特許及び意匠分野にも応用している。
特許部門はしばらく前から商用のAIベースのレビューツールを試験運用しており、現在、すべての審査官が審査業務の一環として同ツールを利用できるようになりつつある。このツールは既存の検索システムを補完するものであり、既存ツールに限界がある検索で特に有用である。これまでの経験では、同ツールはより正確な審査に寄与している。
また、他国の特許庁で既に審査された出願(further-processed applications)の処理における人工知能の活用に向けたプロトタイプも開発中である。この作業は秋にかけて継続される。
さらに、特許部門には、経験の浅い出願人からのAI生成特許出願が大量に流入している。当庁は、特許につながる可能性の低い出願を人工知能で識別できるかどうかを調査しており、これにより資源をより効果的に配分し、これらの出願をより効率的に処理することを目指している。
意匠分野では、出願前に画像の品質確認を改善し、正しい分類を提案するために人工知能をどのように活用できるかを探るプロトタイプを開発中である。その狙いは、より多くの出願が提出時点で完備されるようにし、より迅速な処理を可能にすることである。
専門チームと技術チームの協働による開発
これらのAIソリューションは、当庁の特許・商標・意匠分野の専門家とIT開発者の緊密な協働により開発された。審査官がニーズを定義してソリューションの品質を保証し、開発者がそれを構築した。継続的なテストとフィードバックを通じて、ソリューションは段階的に改善されてきた。専門知識と技術力を持つ人々が共に開発に取り組むときに最良のソリューションが生まれる、というのが当庁の経験である。
国際的な関心
当庁の人工知能への取り組みは国際的な関心を集めている。商標分野で世界最大の年次会合である2026年の国際商標協会(INTA)会議では、他の登録官庁に当庁のソリューションを紹介した。また、経験を交換し協力の可能性を議論するため、複数の知財庁と対話を行っている。
複数の知財庁がサービスに人工知能を導入しつつある。欧州連合知的財産庁とオーストラリア知的財産庁はいずれも、出願前に出願人が商標を評価するのを支援するAIベースのツールを公開している。
これまでのところ、当庁の人工知能への取り組みは主に審査業務を支援するソリューションに焦点を当ててきた。やがて、この取り組みの経験は、出願前又は出願過程で出願人により良い案内を提供するソリューションへのAI活用を検討する基礎にもなり得る。
専門的評価により多くの時間を
目標は、技術が最大の価値をもたらす場面で人工知能を活用することである。これにより定型業務がより効率的に遂行され、審査官は法的・専門的判断を要する評価により多くの時間を充てられるようになる。
出典:ノルウェー工業所有権庁(Patentstyret) 原文日付:2026年8月6日 原文リンク:https://www.patentstyret.no/en/articles/use-of-ai-in-case-handling
本記事は英語の原文を元に日本語へ翻訳(仮訳)されたものです。