日付:2026-08-14
公開日付:2026-08-14
1. はじめに
1.1 概要
人工知能(AI)とは、入力データおよびプロンプトに基づき、予測、コンテンツ、推奨又は決定などの出力を生成することができる機械ベースのシステムをいう。生成AI(GenAI)は、入力データからパターンを学習することにより、テキスト、画像、音声又は動画などの新たなコンテンツを生成するAIの一種である。各分野において生成系ツールの利用が急速に拡大する中で、特許審査における利用についても検討する必要が生じている。特許審査は文献量が多く、技術的に複雑であり、法的に変化し続け、かつ期限に左右される業務である。特許分野の学術研究によれば、これらのツールは、検索語の提案、関連文献の検索及び順位付け、内容の可視化を支援し、多数の特許を選別する際の時間と費用を削減し得るとされている。より最近の研究では、新規性の分析における利用についても検討が始まっている。
インド政府が発行した各種の政策文書は、公的職務におけるAI技術の利用について、体系的かつ責任ある取組みを支持している。これらの文書は、効率性及び公共サービスの提供の改善におけるAIの有用性を認めつつ、人による監督、説明責任、安全性、透明性、プライバシー、リスクに基づくガバナンス及び制度的な保護措置を強調している。
こうした背景の下、本ガイドラインが作成された。その目的は、審査官及び長官(Controller)の技術的、法定上及び準司法的な職務が損なわれ、又は意図した成果を達成できなくなることのないようにしつつ、これらのツールの利点を特許審査手続においていかに適切に活用し得るかを明らかにすることにある。
本ガイドラインにおける各種の利用場面に関する例示の非網羅的な一覧は、一部の公開生成AIツール及び特許庁が利用可能な一部の非公開ツールの助けを借りて作成され、附属書Iに記載されている。これらのツールは専有的な性質を有するため、本ガイドラインでは具体的に特定していない。技術は急速に進化し続けているため、本ガイドラインは今後の進展に照らして随時改訂が必要となる場合がある。
1.2 目的
本ガイドラインは、機密保持、説明責任、一貫性並びに審査官又は長官による独立した判断の行使を維持しつつ、効率性及び品質を支える形で特許審査における人工知能の利用を指導し、規律することを目的とする。
1.3 適用範囲
本ガイドラインは、選別、分類、検索、翻訳支援、起案支援、技術的比較又は知識検索といった特許審査業務における人工知能の利用に適用される。
3.2 人による監督の必要性
人工知能の利用に関するインドの政策資料は、人による監督、検証及び説明責任の必要性を繰り返し強調している。人工知能は、審査官又は長官の職務又は業務を代替するのではなく、支援することを意図したものである。検索又は審査に影響を及ぼし得る人工知能の利用は、すべて人手による確認及び検証の対象としなければならない。審査官又は長官は、いかなる形であれAIの利用を伴う検索及び審査の過程で行われたすべての公務行為について、引き続き全面的な責任を負う。AIの利用によって当該責任が希薄化され、又は移転されることがあってはならない。審査において用いられるAI支援による出力は、批判的に検討・評価され、担当官がその正確性、関連性及び妥当性について自ら納得した後にのみ採用されなければならない。
5. 禁止される利用
以下の利用は認められない。
(a) 未公開の特許出願の内容、機密の庁内記録又は内部の審議資料を、公開のAIツールに入力すること。
(b) 新規性、進歩性、産業上の利用可能性、開示の十分性、明確性又は発明の単一性を含む実体的事項について、審査官又は長官による判断の行使に代えて人工知能を用いること。
(c) 十分な人による監督を経ることなく、AIが生成した出力のみに基づいて、拒絶理由通知、第一次審査報告(FER)、聴聞通知、決定その他の公式な通知を発すること。
(d) 人工知能が提示した判例、先行技術、科学文献その他の参考文献を、信頼できる出所からの独立した出典確認を行わずに引用すること。
(e) AIが生成した内容を、担当官による確認、修正及び採用を経ずに公式な通知に用いること。
(f) 出願人・特許権者又は第三者の権利に影響を及ぼす意思決定、とりわけ異議申立手続のように対立当事者が存在する事案において結論を導く場合において、人工知能のみに依拠すること。
6. 行政上の措置
1. 所管当局は、特定の職務における人工知能の実質的な利用を記録すべき旨を定めることができる。当該記録には、ツールの名称、利用の性質、利用日、その他監督、監査又は品質審査のために必要と認められる情報を含めることができる。当該開示は、審査手続に対する信頼を高めるため、利害関係者が利用できるようにすることができる。
2. 所管当局は、特許庁の職務における人工知能の利用のガバナンスを担う専門委員会を設置することができる。当該委員会には、次の事項を委ねることができる。a. ツールの審査及び承認、b. 利用の許容区分と禁止区分への分類、c. 保護措置及び承認条件の規定、d. 審査手続におけるAI利用に関する試行的調査、e. 品質、誤り、苦情又は方針違反の検証、f. 本ガイドラインの定期的な改訂、並びに g. 関連する利害関係者及び機械学習、自然言語処理又は大規模言語モデルシステムに関する実証可能な技術的専門性を有するAI専門家との協議の実施。インド特許意匠商標総局(CGPDTM)事務局のAIガバナンス委員会は、特許庁審査部門の審査官及び長官、IT部門並びにQMS(品質管理システム)部門の職員により構成されるものとする。職員は、特許庁の異なる技術グループを網羅するように指名されるものとする。
3. 所管当局は、職員の研修及び能力構築のための措置を講ずることができ、その内容は次の事項を対象とする。a. 人工知能の機能及び限界、b. 機密保持上のリスク及びプロンプトの規律、c. AI支援による出力の検証、d. 公共サービスにおける責任ある利用、e. ハルシネーション、根拠のない主張及び捏造された引用の識別、f. 本ガイドラインの下で許容される利用及び禁止される利用。
4. 所管当局は、適当な場合には、独立した監査、影響評価、フィードバックの仕組み及びインシデント報告制度を設けることもできる。
本ガイドラインには、このほか第2節(用語)、第3.1節(限界及びリスク)、第4節(特許審査におけるAIの典型的な利用、潜在的リスク及び関連する保護措置)、附属書I(特許審査における人工知能の利用に関する例示の非網羅的一覧)及び附属書II(チェックリスト及び宣誓書)が含まれている。全文はガイドライン全文(PDF)を参照されたい。
出典:インド特許意匠商標総局(CGPDTM)、2026年8月7日、原文リンク:https://ipindia.gov.in/dynamic/news-details/119
本記事は英語の原文を元に日本語へ翻訳(仮訳)されたものです。