日付:2026-08-14
公開日付:2026-08-14
中華人民共和国最高人民法院
行政判決書
(2023)最高法知行終413号
上訴人(第一審原告、特許出願人):某某マネジメント有限責任会社。所在地:ドイツ連邦共和国。
代表者:海某某、同社代理人。
代表者:卡某某、同社代理人。
訴訟代理人:張浩、北京市集佳法律事務所弁護士。
訴訟代理人:于非凡、北京市集佳法律事務所弁護士。
被上訴人(第一審被告):中国国家知識産権局。所在地:中華人民共和国北京市海淀区。
法定代表者:申長雨、同局局長。
訴訟代理人:王喆、同局審査官。
訴訟代理人:柴瑾、同局審査官。
上訴人某某マネジメント有限責任会社(以下「某某社」という。)と被上訴人中国国家知識産権局との発明特許出願拒絶査定不服審判に関する行政紛争事件は、特許出願人を某某社とし、名称を「導線接続コンタクト要素」とする発明特許出願(以下「本願」という。)に関わる。中国国家知識産権局は第303804号不服審判請求審査決定(以下「被訴決定」という。)を行い、本願を拒絶する決定を維持した。某某社はこれを不服として、中華人民共和国北京知識産権法院(以下「第一審法院」という。)に提訴し、被訴決定の取消し及び中国国家知識産権局に対する再度の審査決定を命じるよう求めた。第一審法院は2022年12月28日に(2022)京73行初17108号行政判決を行い、某某社の請求を棄却した。某某社はこれを不服として当法院に上訴した。当法院は2023年6月26日に立件した後、法に従い合議体を構成し、2024年7月12日に本件を公開の法廷で審理し、上訴人某某社の訴訟代理人張浩、于非凡及び被上訴人中国国家知識産権局の訴訟代理人王喆、柴瑾が出廷して訴訟に参加した。本件は既に審理を終結した。
本件の基本的事実は次のとおりである。本願は名称を「導線接続コンタクト要素」とする発明特許出願であり、出願人は某某社、出願番号は20181015****.3、出願日は2018年2月14日、優先日は2017年3月1日である。本件の審査の基礎となる特許請求の範囲のうち、請求項1、2、7の内容は次のとおりである。
「1.電気導線を挟持するための導線接続コンタクト要素(1)であって、少なくとも一つのばね式端子を有し、当該ばね式端子は電気導線を固定的に挟持するための挟持部位を有し、当該導線接続コンタクト要素は少なくとも一つの第一SMDはんだ付けコンタクト(60)を有し、当該第一SMDはんだ付けコンタクトは導線接続コンタクト要素(1)の取付側(61)に設けられ、当該導線接続コンタクト要素(1)はさらに当該導線接続コンタクト要素(1)の板金部品によって形成される導線導入領域(14)を有し、当該導線導入領域は少なくとも一つの導線案内底部(17)を有し、当該導線案内底部は導入される電気導線の案内面を形成するために当該導線導入方向(L)に対して傾斜して配向されており、その特徴とするところは、
当該板金部品の、当該導線導入領域(14)内に存在し、当該導線案内底部(17)から突出する材料区間(62)が、少なくとも一つの屈曲領域(63)を経て取付側(61)の平面に向かって90°を超える角度で屈曲されて当該第一SMDはんだ付けコンタクト(60)を形成し、かつ当該導線案内底部(17)の少なくとも一つの部分領域が少なくとも一つの当該屈曲領域(63)と隣接していること、
ここにおいて、当該第一SMDはんだ付けコンタクト(60)は支持面(64)を有し、当該支持面(64)は導線案内底部(17)の、導入される電気導線を案内する表面側によって形成される。
2.前項の請求項に記載の導線接続コンタクト要素であって、その特徴とするところは、当該支持面(64)が少なくとも一つの当該屈曲領域(63)を経て当該導線案内底部(17)から離間していることにある。
7.上記請求項のいずれか一項に記載の導線接続コンタクト要素であって、その特徴とするところは、当該導線案内底部(17)が当該板金部品の又は異なる板金部品の少なくとも二つの互いに分離した材料区間(62)によって形成され、かつ当該第一SMDはんだ付けコンタクト(60)が当該板金部品のうち一つの板金部品又は二つの板金部品の延長された材料区間(62)によって形成されることにある。」
2021年6月2日、中国国家知識産権局はその原審査部門の審査を経て、本願を拒絶する決定を行った。主たる理由には、本願の原請求項1~25が2008年改正の中華人民共和国特許法(以下「特許法」という。)第22条第3項に規定する進歩性を具備しないことが含まれる。
中国国家知識産権局の原審査部門は次の証拠を引用した。
引用文献1:公開日2017年1月11日、公開番号CN106329180Aの中国発明特許出願文献。引用文献1は次のコネクタを開示している(明細書第26~71段、図1~14参照)。回路基板80の上面82には導体から成る複数のはんだパッド84が設けられ、使用時にコネクタ10ははんだ付け等の方法ではんだパッド84に固定されて電気的接続を実現する。回路基板80に固定されたコネクタ10は、前後方向に沿ってコネクタ10の前端からコネクタ10に挿入されるケーブル70の導電芯72と電気的に接続され得る。コネクタ10はハウジング20と弾性部材40とを含み、ハウジング20は金属製であり、弾性部材40はハウジング20の金属より硬い別の金属から成る。弾性部材40は第二素材を屈曲させることにより形成され全体としてクリップ形状を有し、弾性部材40は板状の取付部410と湾曲板状の被支持部420とを有する。被支持部420は片持ち方式で取付部410に支持され、被支持部420は弾性部430と傾斜部460とを有する。導電芯72が空間12内に挿入されると、導電芯72の端部又は負X側端が弾性部材40の傾斜部460に当接する。ハウジング20は本体部210、梁部230、二つの操作部240、二つの揺動抑制部270、揺動抑制部272、ストッパ280及び二つの接続部290を有する。本体部210は全体として角管形状を有し、X方向において前端210Fと後端210Rとの間に延びる。本体部210は三つの案内部260を有し、そのうち二つの案内部260はそれぞれ側部214、216に設けられ、残りの一つの案内部260は底部218に設けられる。図14から分かるように、底部に位置する案内部260は導線導入方向に対して傾斜して配向され、導入される導電芯72の案内面を形成する。揺動抑制部272は本体部210の底部218から前方に延び、同時に緩やかに下方に傾斜する。各揺動抑制部270及び揺動抑制部272は本体部210の前端210Fから前方に延び、挿入空間12の入口開口122の前方に位置決めされる。コネクタ10を使用する際、Y方向において、揺動抑制部272の下面の相対する両側もはんだ付け等の方法で回路基板80のはんだパッド84に固定されて接続される。図1、2、12~14から分かるように、揺動抑制部272の下面は回路基板80の接触面に支持され、それは底部に位置する案内部260から突出する材料区間の、一つの屈曲領域に接続する外側の下面によって形成され、屈曲領域は90°を超える角度を有する。さらに図14から分かるように、揺動抑制部272は、底部に位置する案内部260から突出する材料区間が一つの屈曲領域を経て取付側の平面に向かって屈曲されて成るものであり、導線導入方向に対して傾斜して配向された底部に位置する案内部260の一部の領域が上記屈曲領域と隣接している。
2021年8月24日、某某社は中国国家知識産権局に不服審判を請求し、審判手続において特許請求の範囲を補正して、上記の審査の基礎となる特許請求の範囲を形成した。
2022年4月21日、中国国家知識産権局は被訴決定を行い、次のように判断した。引用文献1に基づき本分野の技術常識と結び付けて請求項1が保護を求める技術的解決手段を得ることは、当業者にとって自明であり、請求項1は突出した実質的特徴及び顕著な進歩を有さず、進歩性を具備しない。これを前提として、請求項2~25も進歩性を具備しない。中国国家知識産権局はこれに基づき、2021年6月2日に本願に対して行った拒絶決定を維持する旨決定した。
WAGO社はこれを不服として、2022年10月28日に第一審法院に提訴し、被訴決定の取消し及び中国国家知識産権局に対する再度の審査決定を命じるよう求めた。事実及び理由は次のとおりである。被訴決定の相違点の認定には誤りがあり、引用文献1に基づいて相違点(2)を得ることが通常の選択であり技術的効果が予期できるとの被訴決定の認定にも誤りがある。被訴決定が請求項2~25は進歩性を具備しないと認定した点には、事実認定の誤りがある。
中国国家知識産権局は第一審において次のように主張した。被訴決定は事実認定が明確であり、法令の適用が正確であり、審査手続が適法であり、審査の結論も正確であるとして、某某社の請求を棄却するよう求めた。
第一審法院は審理を経て上記事実をおおむね認定した。
第一審法院は次のように判断した。
本願の請求項1については、引用文献1と比較して、相違点は次のとおりである。(1)ハウジングが板金部品であること;(2)支持面が導線案内底部の、導入される電気導線を案内する表面側によって形成されること。上記相違点に基づき、当該請求項が実際に解決する技術的課題は、いかにハウジングを形成するか、いかに省スペース化のためSMDはんだ付けコンタクトを形成するかである。
相違点(1)について、引用文献1は既に「ハウジング20はステンレス鋼より軟らかいが導電性はステンレス鋼より良好な金属から成る単板を屈曲させることによって形成される」ことを開示しており、板金加工は本分野で常用される金属薄板向けの総合的な冷間加工技術であって、強度が高く、コストが低く、プレス金型の製造が簡単である等の特徴を有する。したがって、引用文献1及び上記技術常識に基づき、当業者は実際の状況又は必要に応じて板金加工を用いてコネクタのハウジングを加工形成することを容易に想到し得る。これは当業者の通常の選択に属し、当業者が創造的な労働を払う必要はなく、技術的効果も合理的に予期できる。
相違点(2)について、引用文献1は「揺動抑制部272の下面は回路基板80の接触面に支持され、それは底部に位置する案内部から突出する材料区間の、一つの屈曲領域に接続する外側の下面によって形成される」ことを開示しており、そのうち揺動抑制部272が回路基板80とはんだ付け接触し得る表面には、上記下面のほか、上記下面と対向する上面及び両者の間の端部端面も含まれる。当業者は、引用文献1に開示された上記下面を回路基板80とはんだ付け接触させ得ることのほか、実際の状況又は必要に応じて上面又は端部端面を回路基板80とはんだ付け接触させ得ることを容易に想到する。例えば、回路基板とのはんだ付けをより強固にしかつ構造空間を小さくすることを望むが、材料を節約するか否か、材料コストが高いか否かについては特段の要求がない場合には、90°を超える完全屈曲方式を採用して揺動抑制部272の上面を回路基板80とはんだ付け接続することができ、他方、より材料を節約し、材料コストを低くしかつ構造空間を小さくすることを望むが、回路基板とのはんだ付けがより強固か否かについては特段の要求がない場合には、90°未満の屈曲方式を採用して揺動抑制部272の端面を回路基板80とはんだ付け接続することができる。以上はいずれも当業者の通常の手段に属し、当業者が創造的な労働を払う必要はなく、技術的効果も合理的に予期できる。
したがって、引用文献1に基づき本分野の技術常識と結び付けて請求項1が保護を求める技術的解決手段を得ることは、当業者にとって自明であり、請求項1は突出した実質的特徴及び顕著な進歩を有さず、特許法に規定する進歩性を具備しない。
本願の請求項2については、実際の応用に際し、引用文献1の開示内容に基づき、ハウジングにケーブル被覆74を保持するための揺動抑制部を設ける必要がない場合には、当業者は実際の状況又は必要に応じてはんだ付け部の形成方式を適宜調整する能力を有し、当該部位が平面構造で回路基板の接触面に接触するようにすればSMDはんだ付けを実現できる。さらに、引用文献1に基づき、実際の状況又は必要に応じて屈曲方向が互いに逆の二つの屈曲領域を経て当該揺動抑制部272に屈曲成形することもでき、これも当業者の通常の手段である。以上は当業者が創造的な労働を払う必要がなく、技術的効果も合理的に予期できる。
本願の請求項7については、引用文献1の開示内容に基づき、実際の応用に際し、当業者は実際の状況又は必要に応じて案内部及びはんだ付け部の成形方式を適宜調整する能力を有し、ハウジングと一体成形するか別体成形するかはいずれも当業者の通常の選択である。
某某社が法廷において、請求項1が進歩性を具備しないと仮定する場合には請求項2、7の進歩性のみを維持し、その余の請求項の進歩性については維持しない旨述べたことに鑑み、被訴決定がその余の請求項について行った評価はいずれもこれを確認する。
第一審法院は、特許法第22条第3項、中華人民共和国行政訴訟法第69条の規定に基づき、次のとおり判決した。「原告某某マネジメント有限責任会社の請求を棄却する。事件受理費100元は原告某某マネジメント有限責任会社の負担とする。」
WAGO社は第一審判決を不服として当法院に上訴し、次を求めた。1.第一審判決を取り消すこと;2.被訴決定を取り消し、中国国家知識産権局に対し再度の審査決定を命じること。事実及び理由は次のとおりである。(一)本願の請求項1は進歩性を具備する。1.被訴決定は本願の請求項1と引用文献1との相違点(3)、すなわち「当該板金部品の、当該導線導入領域(14)内に存在し、当該導線案内底部(17)から突出する材料区間(62)が、少なくとも一つの屈曲領域(63)を経て取付側(61)の平面に向かって90°を超える角度で屈曲されて当該第一SMDはんだ付けコンタクト(60)を形成する」を看過している。本願の請求項1は「90°を超えて屈曲する」ことを限定しているのに対し、引用文献1の屈曲は90°未満であり、両者の屈曲方向及び屈曲角度は異なる。本願の図2において、導線案内底部17から斜め下方に突出する材料区間は右側の取付側61に向かって鈍角に屈曲されて第一SMDはんだ付けコンタクトを形成している。引用文献1の図11においては、案内部260から斜め下方に突出する材料区間が右側の底部218(取付側)から離れて左方に鋭角に屈曲されて揺動抑制部272を形成していることが明らかに見て取れる。本願の屈曲方向及び屈曲角度は引用文献1と全く異なり、被訴決定が引用文献1は上記相違点を開示していると認定したのは事実認定の誤りである。これに基づき、第一審判決が認定した技術的課題は十分に包括的ではなく、本願はより大きな、回路基板に平行なはんだ付け面積を得ており、信頼性を高めている。2.引用文献1に基づいて相違点(2)を得ることが通常の選択であり技術的効果が予期できるとの被訴決定の認定は、事実認定の誤りである。被訴決定が相違点(2)を通常の選択と認定したことには証拠の裏付けがなく、相違点(1)ないし(3)は顕著な技術的効果を有する。引用文献1は相違点(2)と反対の教示を与えている。引用文献1においては、揺動抑制部272を含む前部領域が側壁270と一体に製造されているため、これにより揺動抑制部272が本願の方式で取付側に向かって90°を超える角度で屈曲されて前部のはんだ付けコンタクトを形成することが禁じられ、ひいては当該支持面が導線案内底部の、導入される導線を案内する表面側によって形成され得ないことになる。揺動抑制部272は導線の揺動を抑制する作用を果たしており、仮に揺動抑制部272が本願の方式で取付側に向かって90°を超える角度で屈曲されて前部のはんだ付けコンタクトを形成するとすれば、揺動抑制部はケーブルの下方への揺動を抑制することができず、揺動抑制部は上記重要な作用を失うことになる。引用文献1は反対の教示を与えている。(二)本願の請求項2~25は進歩性を具備する。
中国国家知識産権局は次のように主張した。請求項が保護を求める範囲はその実際に記載された内容を基準とすべきであり、本願の請求項1に記載された技術的解決手段は本願の実施例の図1~3の具体的構造のみに対応するものではない。取付側61はSMDはんだ付けコンタクトの左側に位置する可能性も右側に位置する可能性もあるため、屈曲の方向を確定することができず、屈曲方向が右側に向かう構造を一義的に確定することはできない。したがって、引用文献1が対応する特徴を開示していると認定することができ、某某社が主張する相違点(3)の看過は存在しない。当業者は、引用文献1に開示された下面を回路基板80とはんだ付け接触させ得ることのほか、実際の状況又は必要に応じて上面又は端部を回路基板80とはんだ付け接触させ得ることを容易に想到する。引用文献1は反対の教示を与えておらず、相応の変更は当業者の通常の手段に属し、創造的な労働を払う必要がなく、それによりもたらされる技術的効果は合理的に予期できる。本願の上面による支持は、引用文献1の揺動抑制部の下面による支持と比較して、いかなる顕著な技術的効果ももたらしていない。第一審判決は事実認定が明確であり、法令の適用が正確であり、審理手続も適法であるとして、上訴を棄却し原判決を維持するよう求めた。
本件の第二審期間中、当事者はいずれも新たな証拠を提出せず、また第一審判決の証拠の真実性、適法性及び関連性に関する認定についていずれも異議を述べなかった。
当法院が審理により確認したところ、第一審法院が認定した事実は真実であり、当法院はこれを確認する。
当法院は次のように判断する。本件は発明特許出願拒絶査定不服審判に関する行政紛争である。本願の優先日は2008年改正特許法の施行日(2009年10月1日)より後であり、2020年改正特許法の施行日(2021年6月1日)より前であるため、本件には2008年改正特許法を適用すべきである。本件の第二審における争点は、本願の請求項1~25が進歩性を具備するか否かである。
特許法第22条第3項は次のように規定する。「進歩性とは、従来技術と比較して、当該発明が突出した実質的特徴及び顕著な進歩を有し、当該実用新案が実質的特徴及び進歩を有することをいう。」発明が突出した実質的特徴を有するか否かの判断においては、一般に最も近い従来技術を確定し、保護を求める発明が最も近い従来技術と比較していかなる相違点を有するかを分析し、当該相違点が達成し得る技術的効果に基づいて発明創造が実際に解決する技術的課題を確定し、さらに保護を求める発明が当業者にとって自明であるか否か、すなわち従来技術が当該相違点を最も近い従来技術に適用してそこに存在する技術的課題を解決する示唆を与えているか否かを判断すべきである。発明が顕著な進歩を有するか否かの判断においては、主として発明が従来技術に対して有益な技術的効果を有するか否かを考慮すべきである。
(一)本願の請求項1が進歩性を具備するか否か
1.相違点及び実際に解決する技術的課題について
某某社は、被訴決定が相違点「当該板金部品の、当該導線導入領域(14)内に存在し、当該導線案内底部(17)から突出する材料区間(62)が、少なくとも一つの屈曲領域(63)を経て取付側(61)の平面に向かって90°を超える角度で屈曲されて当該第一SMDはんだ付けコンタクト(60)を形成する」を看過していると主張する。中国国家知識産権局は、取付側(61)はSMDはんだ付けコンタクトの左側に位置する可能性も右側に位置する可能性もあるため、材料区間(62)の屈曲方向を確定することができず、屈曲が右側に向かうことを一義的に確定することはできず、請求項1は実施例1の技術的解決手段のみに対応するものではないと主張する。これについて、まず、取付側は導線接続コンタクト要素の一部であり、取付側に向かって屈曲するということは、必然的に導線接続コンタクト要素の方向に向かって屈曲することであって、反対方向に屈曲することではない。次に、当該技術的特徴は屈曲方向を限定すると同時に「90°を超える角度で屈曲する」ことを限定しており、かつ屈曲の結果は支持面を有する第一SMDはんだ付けコンタクトを形成することであって、これもまた取付側に向かう屈曲は一つの方向への屈曲でしかあり得ないことを示している。取付側がSMDはんだ付けコンタクトの異なる側に位置し得ると解釈することは、上記技術的特徴の全体に対する合理的な解釈には当たらない。引用文献1が開示する材料区間は取付側から離れる方向に向かい、90°未満に屈曲されて揺動抑制部272を形成しているのであって、すなわち引用文献1は「材料区間(62)が少なくとも一つの屈曲領域(63)を経て取付側(61)の平面に向かって90°を超える角度で屈曲されて当該第一SMDはんだ付けコンタクト(60)を形成する」という技術的特徴を開示していない。被訴決定が前記相違点を看過しているとの某某社の上訴理由は成り立ち、当法院はこれを支持する。
これに基づき、本願の請求項1と引用文献1との相違点は次のとおりである。(1)ハウジングが板金部品であること;(2)支持面が導線案内底部の、導入される電気導線を案内する表面側によって形成されること;(3)当該板金部品の、当該導線導入領域(14)内に存在し、当該導線案内底部(17)から突出する材料区間(62)が、少なくとも一つの屈曲領域(63)を経て取付側(61)の平面に向かって90°を超える角度で屈曲されて当該第一SMDはんだ付けコンタクト(60)を形成すること。
某某社は、本願の請求項1が実際に解決する技術的課題は、より大きな支持表面を有して信頼性を高めることであると主張する。これについて、発明が実際に解決する技術的課題は、相違点が達成し得る技術的効果に基づいて確定すべきである。相違点(1)の技術的効果はいかにハウジングを形成するかであり、相違点(2)(3)はいずれもいかにSMDはんだ付けコンタクトを形成するかに関わる。某某社は相違点(3)がより大きな支持表面を提供して信頼性を高める効果を有すると主張するが、本願と引用文献1の屈曲方向及び角度の相違は、本願が必然的により大きな支持表面を有するという結果をもたらすものではない。したがって当該効果は相違点に基づいて達成し得る技術的効果ではなく、本願の請求項1は異なる構造のSMDはんだ付けコンタクトを提供したにすぎない。よって、被訴決定は相違点を看過してはいるものの、認定した本願の請求項1が実際に解決する技術的課題には明らかな不当はなく、当法院はこれを確認する。
2.請求項1が引用文献1と本分野の技術常識との結合に対して自明であるか否かについて
某某社は、相違点(1)(2)(3)は顕著な技術的効果を有し、引用文献1は相違点(2)(3)と反対の教示を与えており、当業者は引用文献1に基づいて相違点(1)(2)(3)を得る動機を有しないと主張する。
これについて、まず、相違点(1)に関して、引用文献1は既に「ハウジング20はステンレス鋼より軟らかいが導電性はステンレス鋼より良好な金属から成る単板を屈曲させることによって形成される」ことを開示しており、板金加工は本分野で常用される金属薄板向けの総合的な冷間加工技術であって、強度が高く、コストが低く、プレス金型の製造が簡単である等の特徴を有する。したがって当業者には板金加工を用いてコネクタのハウジングを加工形成する動機があり、ハウジングを板金製とすることの選択に当業者が創造的な労働を払う必要はなく、技術的効果も合理的に予期できる。
次に、相違点(2)(3)に関して、機能上互いに支持し合い、相互作用の関係にある技術的特徴については、当該技術的特徴及びそれらの間の関係が保護を求める発明において達成する技術的効果を全体として考慮すべきである。本件において、「支持面が導線案内底部の、導入される電気導線を案内する表面側によって形成される」及び「当該板金部品の、当該導線導入領域(14)内に存在し、当該導線案内底部(17)から突出する材料区間(62)が、少なくとも一つの屈曲領域(63)を経て取付側(61)の平面に向かって90°を超える角度で屈曲されて当該第一SMDはんだ付けコンタクト(60)を形成する」は、共同して材料区間の屈曲方向を限定して支持面を形成するものであり、上記相違点は一つの全体として考慮すべきである。某某社もまた相違点を一つの全体として判断すべきであるとしている。引用文献1は「揺動抑制部272の下面は回路基板80の接触面に支持され、それは底部に位置する案内部から突出する材料区間の、一つの屈曲領域に接続する外側の下面によって形成される」ことを開示しており、そのうち揺動抑制部272が回路基板80とはんだ付け接触し得る表面には、上記下面のほか、上記下面と対向する上面も含まれる。当業者は、引用文献1に開示された上記下面を回路基板80とはんだ付け接触させ得ることのほか、実際の状況又は必要に応じて上面又は端部端面を回路基板80とはんだ付け接触させ得ることを容易に想到する。そして材料区間の上面、下面を支持面として形成することは、それぞれ取付側に向かって90°を超えて屈曲する方式、取付部から離れて90°未満に屈曲する方式を採用することにより実現し得る。以上はいずれも当業者の通常の技術的手段に属し、創造的な労働を払う必要はなく、技術的効果も合理的に予期できる。
最後に、引用文献1に反対の教示があるとの某某社の主張の問題について、いわゆる反対の教示は依然として技術的示唆の判断の一部に属するため、なお発明が実際に解決する技術的課題を基礎として判断すべきであり、従来技術が開示する内容が、当業者が発明の実際に解決する技術的課題を解決する上での障害を構成しない場合には、通常これが反対の教示を構成するとは認められない。上記のとおり、本願の請求項1は引用文献1に対して異なる構造のSMDはんだ付けコンタクトを提供したにすぎず、揺動抑制作用を維持したり他の機能を実現したりするものではない。当業者が引用文献1に開示された揺動抑制部の位置及び構造から出発し、揺動抑制の機能を放棄して、本願の請求項1と同様に支持面としての作用を有する第一SMDはんだ付けコンタクトを得ることは自明であり、このような変更が創造的な労働を要するとは認められない。したがって引用文献1は反対の教示を構成せず、WAGO社の当該主張は成り立たない。
以上を総合すると、本願の請求項1は引用文献1及び本分野の技術常識の結合に対して進歩性を具備しない。被訴決定及び第一審判決には相違点の認定に誤りがあるが、請求項1が進歩性を具備しないとの結論の認定には不当はなく、当法院はこれを確認する。
(二)本願のその他の請求項が進歩性を具備するか否か
某某社は本願のその他の請求項の進歩性について明確な意見を述べておらず、審査したところ、被訴決定及び第一審判決の本願のその他の請求項の進歩性に関する認定の結論には不当はなく、当法院はこれを確認する。
以上を総合すると、某某社の上訴請求は成り立たず、棄却すべきである。第一審判決は事実の認定及び法律の適用に瑕疵があるものの、裁判の結果は正確であり、維持すべきである。中華人民共和国行政訴訟法第89条第1項第1号の規定に従い、次のとおり判決する。
上訴を棄却し、原判決を維持する。
第二審の事件受理費人民元100元は、某某マネジメント有限責任会社の負担とする。
本判決は終審判決である。
裁判長 崔寧
裁判官 顧正義
裁判官 王倩
二〇二四年十二月二十四日
裁判官補佐 劉子銘
書記官 陳琦
出典:最高人民法院知的財産法廷、2026年8月7日、原文リンク:https://ipc.court.gov.cn/zh-cn/news/view-5988.html
本記事は中国語の原文を元に日本語へ翻訳(仮訳)されたものです。